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三月になりました。
家の中は、まだまだ寒いですが、外に出ると春の訪れを感じるようになりました。
いつも散歩する森で、ガビチョウのさえずりを今年初めて聞きました。
ガビチョウとは、画眉鳥と書き、もともとは日本にいなかった鳥、外来種だそうです。
私の持っている鳥図鑑に載っていないので、美しいさえずりが気になりつつも去年までこの鳥のことは知りませんでした。
裏の林であまりにきれいな大きな声でさえずり、家の中まで聞こえてくるので、気になってネットで調べてわかりました。
冬の間は、森の鳥たちはジジッ、とかピーとかいう地鳴きだけで、さえずりは聞かれませんでしたが、おとといあたりからシジュウカラもツーピーツーピーとさえずるのが聞かれるようになりました。
そして、恐れていた新しい看板が立っているのを発見しました。
「クマ出没注意」です。
熊の糞が発見されたので注意してください、と。
糞で良かった、これからは人間に出会うことなく、おだやかに熊生を全うするんだよとつぶやきながら通り過ぎました。
春と言えば、移住です!
引っ越しの日が迫り、荷造りに追われています。
長い間お付き合いのあった美容院やお店などで最後の買い物をし、引っ越しのあいさつをしました。
「近くに来たら顔を出してくださいね」
「困ったら電話してくださいね。引っ越してもお付き合いが終わるわけではありませんから。」
と声をかけてくださいました。
いろんな人たちの働きによって私の生活が成り立っていたのだなとしみじみ感じ、感謝の気持ちがわいてきました。
私の住むこの美しい町を去るのが、ちょっとさびしくなりました。
私の住む町は、里山の景色が広がる美しいところです。
特に新緑の頃は、周りを囲む山々が新芽の薄緑や山桜のピンクなどのパステルカラーに彩られ、特に山桜は誰が見るわけでもないのに山々のあちこちで咲いて、ため息が出るくらい美しいです。
小さな町ですが、スーパーや郵便局、役場、医院など歩いて行ける範囲にそろっていて、大きな病院に行く町の乗り合いタクシーもあり、それでいて渋滞とは無縁で、交通事故も少なく、便利で過ごしやすい町です。
住んでいる人々は、引退世代が多いせいか、穏やかに静かに暮らしている人が多いように思います。
知らない者同士でも会釈やあいさつ、譲り合いをすることが日常的にあり、私も心穏やかに過ごしてきました。
私はこの町がとても好きで、この町で生まれ育ったわけではありませんが、この町で一生を終えてもいいかなと思っていました。
移住を決めたのも、この町が嫌で決めたわけではないのです。
この町でこのまま住んでいれば、高齢になってもなんとかやっていけそうな気がします。
けれども一方で、50代後半という年齢になり、やり残した夢があり、このままでいいのかという心の声が聞こえてきました。
そして、勇気を出してもう一回チャレンジしたい、一生は一回きり、後悔したくないという心の声に従うことにしたのです。
移住が失敗するかどうかはやってみないとわからないし、失敗成功ではなく、私の人生なので私が満足していればいいことだ、失敗してもチャレンジした自分にきっと満足できるだろう、と思いました。
それで、どうしてもうまくいかなかったら、またこの町に帰って来よう、と思いました。
引っ越しの日が迫り、けっこうドキドキ、武者震いするような思いがしています。
誰も知っている人のいない土地でやっていけるのか、もちろん不安がないとはいえませんが、心を込めて自分の仕事をし、人との出会いを大切にし、あたたかな関係を築く努力をしていくことで新しい環境に慣れていかれたらいいなと思っています。